シルクのように白く滑らかな質感の花びらが印象的な「テッポウユリ」。日本原産のユリで、世界中で愛されています。
テッポウユリは、その優しい香りと美しい見た目から誕生日などお祝い事のプレゼントとしても人気が高いほか、花壇を彩るお花としても親しまれている品種です。
本記事では、そんなテッポウユリの特徴や正しい植え方・増やし方、プレゼントとして渡すおすすめシチュエーションまで、詳しい情報をご紹介します。
この機会に、テッポウユリについて理解を深めてみてはいかがでしょうか。
テッポウユリとはどんな花?
テッポウユリは九州南部から沖縄にかけて自生する、日本固有の原種ユリのひとつです。
明治時代の頃から海外へ輸出されるようになり、今では海外にも多くのファンがいます。
テッポウユリは他のお花と交雑(こうざつ)しやすいため、テッポウユリと別の品種をかけ合わせた様々な園芸品種が生み出されてきました。
開花時期は6~8月頃で、九州・沖縄では夏になると、道端や野山でラッパのような白い花をいくつも咲かせたテッポウユリを見かけることでしょう。
また、テッポウユリには「琉球百合」という別の名前が付けられているんです。「琉球」とは沖縄の別称で、テッポウユリが沖縄でとても身近なお花だということが伝わります。
ちなみに英名は「Easter lily(復活祭のユリ)」で、日本原産のお花でありながら、イエス・キリストの復活を祝う復活祭の象徴とされているんですよ。
キリスト教との関わりも深いテッポウユリの花言葉
テッポウユリの花言葉は、主に「純潔」「威厳」「甘美」の3つ。
白いユリ一般の花言葉でもある「純潔」は、ユリがキリスト教において聖母マリアに捧げられた花で、その処女性を象徴するものであることに由来します。
上でも、テッポウユリが復活祭の象徴とされていることをご紹介したように、ユリはキリスト教と深い結びつきがある花。旧約聖書にも、乙女をユリに例えた詩が登場しています。
その他、「威厳」の花言葉はユリの堂々とした姿、「甘美」はテッポウユリの優しく甘い香りが由来だとされています。
告白やプロポーズの際など、女性の美しさや高潔さへの賛美を伝えたい時は、こういった花言葉にメッセージを込めてテッポウユリをプレゼントしても良いかもしれませんね。
テッポウユリによく似た2種類のユリ
テッポウユリには、よく似た品種が2つほどあります。
台湾原産「タカサゴユリ」
「タカサゴユリ」は台湾原産のユリで、繁殖力が高いのが特徴。
開花時期は7~9月で、道路わきや空き地などにも生息できるたくましいユリです。
テッポウユリと見分けるには、花弁と葉・茎の太さに注目しましょう。タカサゴユリには花弁の外側に赤褐色のラインが入っていて、葉や茎がテッポウユリよりも細いです。
品種改良で生まれた「シンテッポウユリ」
「シンテッポウユリ」は、テッポウユリとタカサゴユリを交配させて生まれた品種です。
開花時期は8~9月で、こちらも繁殖力に優れています。
交配を繰り返しているため、タカサゴユリ・テッポウユリと区別するのは難しいですが、テッポウユリに比べて花が小さく、より葉が細いことが見分けるポイントです。
テッポウユリの育て方は?球根の植え付け方法
ここまで、テッポウユリとはどんな花かを詳しくご紹介しました。
続いては、実際にテッポウユリを自宅の花壇や鉢植えで育ててみたい方のために、一通りの育て方を解説していきます。
まずは、正しい土づくりと、球根を植える方法について見ていきましょう。
土づくりの仕方
テッポウユリに限らず、植物を育てるためには良質な土が欠かせません。土の状態によって、テッポウユリの育ち具合も大きく変わってきます。
「鉢植え」で育てる場合と、花壇など地面に直接植える「地植え」で育てる場合で土づくりの方法が変わってくるため注意しましょう。
- 鉢植え:赤玉土と腐葉土を7:3の割合で混ぜる
- 地植え:よく耕した土に腐葉土を2~3割混ぜる
地植えの場合、土を30cm以上耕してテッポウユリが根を伸ばしやすい環境にすることが大切。鉢植えでは水はけが悪くなりがちなので、川砂を1割ほど混ぜて水はけを良くするのも効果的です。
球根を植える方法
土の準備が整ったら、市販の球根を植えていきましょう。
植える際には、鉢植えでは土の表面から10~15cm下、地植えでは地面から10~15cm下に球根を置くのがポイントです。
テッポウユリは成長すると、球根からだけでなく土の中にある茎部分からも根を生やすため、ある程度は茎が土の中に埋もれていた方が良いのです。
また、いくつか球根を植える場合は、球根同士の間隔を確保するのも大切。
鉢植えなら、5号鉢の大きさで球根1つ、10号鉢の大きさで球根2~3つが目安です。地植えなら、球根と球根の間を15~20cmは空けるようにしましょう。
テッポウユリに水やり・肥料を与えるポイント
無事にテッポウユリの植え付けが完了したら、水やり・肥料で生育を促しましょう。
水やりのポイント
球根系のお花は乾燥に弱いので、テッポウユリには十分な量の水を与えることが大切!
水やりの方法は、次の通りです。
- 鉢植え:土の表面が乾いたら、水をたっぷり与える
- 地植え:晴れの日が数日続いて土が乾燥していたら、水をたっぷり与える
球根を乾燥させないよう、できれば毎日のように土の状態をチェックしましょう。
肥料を与えるポイント
たくさんの花を咲かせるには、水やりだけでなく肥料を与えることも重要です。
まず、テッポウユリの芽が出たら、植物の成長を促す物質が含まれた「緩効性化成肥料」を株元に撒きましょう。「緩効性」とはゆっくりと成分が放出されることを意味し、3~4ヵ月の長期間にわたって効果が継続します。
その後は、定期的に(月に2~3回ほど)液体肥料を与えましょう。
肥料は多過ぎても少な過ぎても良くないので、パッケージに記載された適量を与えるようにしてください。鉢植えでは培養土1Lあたり2gほど、地植えでは1㎡あたり10gほどが目安です。
テッポウユリが成長したら支柱を立てて害虫対策!
テッポウユリの草丈が伸びて葉が増えてきたら、支柱を立てて支え、害虫対策にも気を配るようにしましょう。
支柱の立て方
テッポウユリの草丈が30cmを超えると、強風などの影響で茎が折れてしまったり、花や葉の重みによって倒れてしまう可能性があります。
そこで、支柱を立ててテッポウユリを支えてあげてください。
テッポウユリが生えている地面に、球根や根が傷まないよう注意しながら支柱を立て、茎と支柱を紐を使って八の字に結びましょう。
害虫対策にも気を配る
せっかく大切に育てても、害虫が付いたことでテッポウユリが弱ってしまう危険もあります。
お花の状態を常にチェックし、もし害虫を見つけたら早めに対処することが大切です。
例えば5~6月に発生する「ユリクビナガハムシ」は、テッポウユリの蕾や葉を食べてしまいます。放っておくと花が咲かなくなってしまうので要注意。ユリクビナガハムシの駆除は、「スミチオン乳剤」等の薬剤を用いておこないましょう。
また、新芽などに寄生することが多いのが「アブラムシ」です。芽の栄養を吸い取り、株を弱らせてしまうので注意してください。加えて、アブラムシの排泄物は「すす病」と呼ばれる葉・幹などで黒いカビが増殖する病気を引き起こすことも。
殺虫効果に優れた「オルトラン」が配合された薬剤で駆除しましょう。
花がら摘みの方法
開花時期になって無事にお花が咲いたら、終わったお花を定期的に摘み取る「花がら摘み」をおこないましょう。
花がらを摘むことでお花の数が増えやすくなり、開花の期間を伸ばす効果もあります。
なるべく葉・茎を傷つけないように、花だけを付け根から摘み取るのがコツですよ。
テッポウユリはシーズン後の植え替えで「連作障害」を防ぐ
栽培は比較的簡単なテッポウユリですが、同じ場所に植えっぱなしにしておくと「連作障害」が起きやすいので気を付けましょう。
連作障害とは、一つの植物を同じ場所で育て続けることで、成長しにくくなる現象。
連作障害のせいで枯れてしまうこともあるため、1~3年に1回は植え替えが欠かせません。
お花のシーズンが終わった後に、鉢植え・地植えともに植え替えを行います。
植え替えのタイミングは、次の通りです。
- 鉢植え:毎年1回、10~11月に行う
- 地植え:2~3年に1回、10~11月に行う
植え替えの方法は簡単で、次のように植え付け方法によって異なります。
鉢植え:土から球根を取り出して茎を全て切り落とし、新しい土に入れ替える 地植え:周辺の土を入れ替えるか、球根を別の場所に移動大切に育てたテッポウユリが枯れてしまうことのないよう、定期的な植え替えを心がけましょう。
テッポウユリを「増やす」には?ユリの花でいっぱいの花壇を作る方法
これからテッポウユリを育てるなら、増やし方についても知っておきたいところ。
ここでは、テッポウユリの増やし方について説明します。
鱗片挿し
まずご紹介するのは、「鱗片挿し」というユリ独特の増やし方です。
ユリの球根は、「鱗片(りんぺん)」と呼ばれる茎がウロコのように変化したものが何十にも折り重なってつくられています。
この鱗片を一枚一枚剥がして土に植えると、そこからまたテッポウユリが育つのです。
鱗片挿しは8月下旬~9月中旬に行うのが最適。球根の一番外側にある鱗片は病気や虫害がある場合も多いので、鱗片挿しには使いません。
鱗片挿しの方法はいたって簡単。鉢に土を用意して、球根の鱗片の根元2/3を埋めます。
あとは球根を育てる方法と同じ要領で、土が乾燥したタイミングで水を与えながら見守りましょう。
木子繁殖
また、「木子繁殖」という方法によってテッポウユリを増やすことも可能です。
土に埋まっている部分の茎部分から伸びる根っこ(上根)に付く小さな球根「木子(きご)」を、普通の球根と同じように植え付けます。
定期的な植え替えをする際には木子がないかチェックして、見かけたら優しく取って別の場所で育ててみましょう。
彩り豊かな花壇に!テッポウユリとの「寄せ植え」に相性抜群のお花は?
テッポウユリを植える花壇をもっと華やかなにしたい。
そんな時は、他のお花との「寄せ植え」を考えてみても良いかもしれません。
寄せ植えする植物を選ぶためには、まずどんな花壇を作るか決めることが大切です。
例えば、テッポウユリが咲く時期に合わせて色々なお花を楽しみたいなら、6~8月頃に花を咲かせるラベンダーやポピー、ダリアなどを植えてみるのはいかがでしょうか。
テッポウユリが咲かない時期にも、花壇がさみしくならないように作るなら、秋から春にかけて花を咲かせるパンジーやビオラ、ムスカリのような小球根の花がおすすめ。
他にも、立体感のある花壇にしたいなら、フェンスやアーチにスイートピーなどツル系のお花を這わせてみても素敵でしょう。
特別な日に喜ばれるテッポウユリのプレゼント
最初に見たように、テッポウユリは贈り物としても大人気。
そこで次に、喜ばれるテッポウユリのプレゼントを用意するポイントをご紹介します。
テッポウユリが喜ばれるシーン
テッポウユリは、冠婚葬祭から誕生日まで、さまざまな場面に適しています。
もちろん相手の好みによる部分はありますが、テッポウユリは香りが強くないほか、色も上品なホワイトなので、万人受けしやすい贈り物になるでしょう。
ブーケ?鉢植え?渡し方のポイント
テッポウユリを渡す方法は様々ですが、特にブーケ・花束にして渡すか、または鉢植えのまま贈る方法も人気です。
ブーケや花束など、他のお花と組み合わせてプレゼントを作るなら、先にテーマを決めて、それに合わせてお花を選びましょう。
例えば、パステルカラーのピンク・黄色の花を組み合わせると、やわらかく温かい印象を与えられます。白をメインにするなら、シラユリや白バラと組み合わせれば洗練されたフラワーギフトに。
組み合わせに悩んだ際は、花屋に一度相談してみてはいかがでしょうか?シーンに合った、素敵な組み合わせを提案してもらえるかもしれません。
知らないと危険?テッポウユリを贈るときの注意点
このようにテッポウユリはプレゼントにぴったりですが、贈る際には注意点もあります。
それは、信心深い方にプレゼントすると、ネガティブな印象を与えてしまう場合があること。
テッポウユリのような白いユリの花は、上で見たキリスト教・仏教の葬儀で用いられる花としても知られています。
そのため、人によっては白いユリに不吉なイメージを持っていることがあるのです。
テッポウユリを渡す際は、相手が信心深いかどうかに気を付けましょう。
もし信心深い方にテッポウユリをプレゼントしたいなら、他のカラフルなお花と組み合わせて不吉なイメージを抱かせないプレゼントにする工夫が大切です。
ユリを買うなら実店舗より通販サイト?
プレゼント用にテッポウユリなどユリの花を買う方法は大きく2つで、ショッピングモールや商店街にあるお花屋さんか、インターネットの通販サイトです。
確かに、直接足を運んでお花を選ぶのも楽しいものです。
ただ、自宅近くにお花屋さんが無かったり、忙しくて営業時間内に足を運ぶことが難しいなら、24時間365日利用できる通販サイトが便利でしょう。
自宅の近くにお花屋さんがあるとしても、実店舗ではスペースに限りがあるため、あまり多くの種類は置けません。選択肢の豊富さという意味でも、通販に軍配が上がります。
とはいえ、お花の現物を見て選べない通販では、届いた花が傷んでいたり、古くなったお花を送られるのではと不安になるかもしれません。
だからこそ、信頼できるネット通販サイトを見つけることが大切です。
「純潔」・「威厳」・「甘美」の花言葉を持つテッポウユリ。
本記事では、そんなテッポウユリの特徴をはじめ、育てるポイントからプレゼントのコツまで詳しくご紹介しました。多くの方に愛されている花のひとつなので、プレゼントするお花に迷ったら、テッポウユリのプレゼントも考えてみてくださいね。