毎年5月から6月にかけて大輪を咲かす美しい芍薬の花。その凛とした立ち姿や甘い香り、鮮やかな色、気品のある柔らかな花びらに目を奪われる人も多いでしょう。
これだけ花が大きいと、自分で育てるのはなかなか難しそうと思う人も多いのではないでしょうか。しかし実は育て方は難しくなく、ご自宅でも十分に育てることができます。
この記事では、自宅で栽培するための育て方のポイントを順を追ってご紹介していきます。
ガーデニングで芍薬を育ててみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
芍薬の育て方は難しい?
芍薬というと、庭園で鑑賞したり、切り花として見かけることが多く、またその華やかな外見から栽培は難しそうというイメージがあります。
ですが、実際のところはどうなのでしょうか? まずは芍薬がどんな花なのか頭に入れながら全体像を確認していきましょう。
芍薬の基本情報
原産はアジアで比較的丈夫な多年草で、春になると芽を出し、茎から大きな花を咲かせます。
芍薬の歴史は長く、平安時代に薬草として使う用途で中国から持ち込まれ、その後 鑑賞用として品種改良が盛んに行われてきました。欧米でも品種改良が行われ、それらは洋シャクヤクとして知られています。
芍薬は「葛根湯」の中に配合されるなど、薬草としての役割も担っています。
色は白、赤、黄色、オレンジ、ピンクなど鮮やかで、背丈は60センチほどまで伸びます。よく牡丹と混同されますが、牡丹は草ではなく樹木なので、高いものは3メートルにまで大きくなります。
栽培を行う上での基本情報
種はあまり出回っていないため、苗から育てるのが一般的です。特に寒さに強く、日当たりや半日陰を好み、水はけがよい肥沃な土で育ちます。
株が大きくなるごとに花つきもよくなります。植え替えも少なく済み、根を張りやすいので、比較的簡単に育てることができるのですよ。
芍薬の育て方を知ろう!購入時期や年間カレンダー
では次に栽培を始めるにあたって、際の苗の購入時期と年間の栽培スケジュールを見ていきましょう。
苗の購入時期
芍薬が市場に多く流通する時期は。秋と春の2回です。
秋に出回る株は比較的小さく、春には開花前の立派な苗が売り出されます。秋のほうが値段は安いのですが、その分 翌春に花が咲かないこともあるため、確実に花を咲かせたいのであれば、春の株を購入するのがオススメです。
開花時期と年間の栽培スケジュール
多年草のため、毎年5月から6月に花を咲かせます。植え付けは主に秋の9月から10月の間で行います。
芍薬の育て方①:土の環境を整える
芍薬を上手に育てるには、水はけのよい肥沃な土を整えることが重要です。
地植えをする場合は、肥料と共に堆肥と腐葉土を混ぜ込んでいきます。割合としては赤玉土中粒4、鹿沼土4、腐葉土2の配合土が理想です。
鉢に植える場合は、玉土(中粒)4:鹿沼土4:腐葉土1〜2:もみ殻燻炭1の割合がオススメです。植え込みをする約2週間前に土を仕込んでおきましょう。
芍薬の育て方②:植え付け
さて苗を購入したら、次は植え付けです。どんなことに気をつけたらいいのかポイントをお伝えします。
植え付けのポイント
植え付けを行う時期は9月から10月が最適で、遅くとも11月上旬までには植えるようにしましょう。
日当たりの良い場所がいいですが、西日が強い場所はできるだけ避け、真夏には直射日光が当たらず少し木陰になるような場所がオススメです。
芍薬は花も大きく葉もよく茂るため、スペースに余裕を持って植えるようにしてください。また苗を植える際には、ポットの古い土を完全に取り除いてください。病虫害の予防になります。また乾燥を防ぐため、植えたらたっぷりと水をあげてください。
鉢植え?地植え?
芍薬は根を張りやすいため、どちらかといえば地植えの方が育ちやすいです。
ただ、ポイントを押さえれば、鉢植えでも育てることは可能。地植え、あるいは鉢植えをする際には、以下の点に気をつけましょう。
地植えの場合は、風通しの良い日(2週間かけて土づくりをした後)に、深さ50cm、幅30〜40cmの穴を掘り、芽が少し隠れるぐらいまで土をかぶせます。水はけがあまり良くない場所であれば、少し山盛りにして植えると改善できます。
鉢植えの場合は、8〜10号などできるだけ大きく、しっかり根を張れる深さのある鉢を使うようにしてください。
小さな鉢で育てると花が咲きにくくなりますので要注意。
また、鉢を使う場合でも、基本的には屋外で育ててください。
芍薬の植え方③:定期的にお手入れ
芍薬は、定期的にお手入れをすることで、より健康な状態で花がたくさん咲きやすくなります。
水やり
植え付けた後は根が短期間で成長するので、水切れを起こさないようにしてください。水やりは土の表面が乾いてからたっぷりあげるようにしてください。また真夏は朝晩に水をあげるのがオススメです。
肥料
芍薬は肥料が足りないと花が咲きにくくなります。
元肥として有機質肥料を与え、花が咲き終わった後の6月、そして新芽が出始める9月から10月に緩効性の化成肥料をあげるのがオススメです。
風通しと花つきをよくする
余分な茎や蕾を取り除くことで、風通しがよくなり、大きな花を咲かせることができますし、また病害虫の予防にもなります。
太い茎に栄養を注ぐためにも、密集している茎や細い茎を剪定しましょう。また蕾は頂点の蕾だけ残すようにします。脇に生えてくる蕾をそのままにしていると、花つきが悪くなります。
病気と害虫対策
芍薬がかかりやすい病気として挙げられるのは、灰色カビ病、立枯病、うどんこ病、炭疽病などです。
特に水はけが悪いとカビが発生するので気をつけましょう。
日当たりの良い場所で、適度に水を与えることが大切です。またアブラムシ、ヨトウムシ、ネコブセンチュウ、コウモリガの幼虫などが特に春から夏にかけて増えるため、殺虫剤をかけたり、あるいは虫よけとして米酢を使うことで予防できます。
芍薬の植え方④:5~6月に収穫
切り花として長く楽しむには、花が咲いた後ではなく、蕾が膨らんだ頃に剪定するのがオススメです。
株に葉を数枚残した状態で切ると、株の消耗を抑えられますよ。
花瓶に活ける前に、あらかじめ水揚げをしておくとより長持ちします。
水揚げの方法は、芍薬の切り花を湿らせた新聞紙に包み、根元から1㎝ほどの部分切りましょう。その先端から1センチを、火であぶり、炭状にします。
その後、根元から2cmほどの部分を手でおれば完了。お花が長持ちしやすくなります。
花瓶はできるだけ高さのあるものを選び、水は毎日変え、茎の下を切ったら、すぐに活けるようにしましょう。また花びらが落ちた後も香りは持続するので、飾って匂いを堪能することもできます。花びらをガラスのお皿に飾るのもオススメですよ。
芍薬の育て方⑤:お花が終わった後は来年に備える
きれいに咲いて花を十分に堪能した後は、来年もまた楽しめるように状態を整えていきましょう。
花がら摘み
芍薬の花を咲いたままにしておくと実がつきます。この実に栄養が取られてしまうため、咲き終わった花は、実になる前に花首を切るようにしましょう。もし種を取りたい場合は、その花だけ残すようにしてください。枯れた花を放置していると、風通しが悪くなって病気や害虫が起きる原因にもなります。
種の収穫
芍薬の種はあまり出回っていないため、花から種を収穫すれば自分で育てることができます。発芽率も高く、オリジナルの花が咲く可能性もあるので、既存の苗から育てるのとはまた違った楽しみを味わえますよ。
芍薬は地域によって夏越し・冬越しが必要になる
芍薬は寒さに強いため屋外で冬越しができますが、特に冬の寒さが厳しい地域では、株元をマルチングすると防寒になります。
また夏の暑さが厳しい地域では、直射日光を避けるため、半日陰に移動するか寒冷紗を使うことをオススメします。
芍薬の花はプレゼントにも最適
芍薬はとても華やかなので、特別なお祝いのプレゼントとしてぴったりです。母の日に感謝の気持ちを込めて贈ったり、誕生日にプレゼントしたり、6月の開花時期もあいまってプロポーズの花として贈ったりする人もいますよ。
またブリザードフラワーのギフトなどもよく見かけます。
まとめ
ここまで読んでみて、実はそれほど芍薬の栽培が難しくないことが分かっていただけたのではないかと思います。注意するポイントを押さえれば、それほど難しくなく育てていくことが可能となります。色も種類も豊富な芍薬。ぜひ自分が好きな芍薬を選んで、育てる過程も含めてぜひ楽しんでください。芍薬に対する愛着もぐっと高まるはずです。