どれだけ少なくても、人生で一度はお通夜や葬儀などの法要に参加したり、仏前に花をお供えしたりする機会があるものです。
特にお盆やお彼岸の時期には、お墓に花を供えた経験がある方も多いでしょう。
ただし、お供えの花「供花(くげ)」にはしきたりやマナーが少なからず存在します。
ふさわしくない花を供えてしまうと、ご遺族の方や、ご先祖様に失礼にあたってしまうかもしれません。
もちろん、一番大切なのは故人を偲ぶ心・遺族に対する思いやりですが、可能な限りマナーを守る心がけは欠かせません。
そこで本記事では、お供えやお悔やみの時に贈る花のマナーやタブーについてご紹介します。
お供え・お悔やみの花のマナー:ふさわしい色
お供えやお悔やみの際のふさわしい花の色は、亡くなって日が浅い場合(四十九日以前)と、四十九日の法要が終わった後とで、ふさわしい色が少し変わります。参列する時期に気を付けて花を選ぶようにしましょう。
葬儀や四十九日までの法要には白を基調とする花を贈る
お通夜、葬儀、初七日など、亡くなってからの日が浅い法要に参列する場合は、白い花だけでまとめた花束を贈りましょう。
ただし、四十九日までの法要には、白、黄、紫の3色を使った花束であればマナー違反にはなりません。白上がり以外で花を贈りたい場合は参考にしてください。
四十九日よりも後には白に薄いピンクやブルーを加えた花を贈る
四十九日を過ぎた場合(一周忌、三回忌、月命日など)は白、黄、紫、桃、赤の5色がいいとされています。
基本は淡い色でまとめるのがマナーとされており、上記の5色以外に、ブルーや水色といったさわやかな色でも喜ばれるでしょう。
その他、淡い色合いのものであれば問題ないので、故人が好きだった花や好きだった色を加えてアレンジメントを贈るのがおすすめです。
お供えの花のマナー:形式
お供えの花は、アレンジメント、花束、切り花などで贈ることができます。
アレンジメント
フラワーのアレンジメントは、かごや花器に吸水性のスポンジを入れて花を活けるものです。花瓶などが必要なく、そのまま飾ってもらえるので手間がかかりません。亡くなって日が浅く忙しいと思われる時期や、花瓶がないご家庭に贈る場合は、アレンジメントが喜ばれます。
花束
花束はアレンジメントよりボリューム感があり、花を活けるのが好きな方に喜ばれます。
近年では、茎の長さを短くしたブーケタイプのものや、通常の花束とブーケタイプの中間にあたるミドルブーケタイプが人気。
切り花
切り花は、花束を包装紙やリボンでラッピングせず、簡易包装したものです。自宅用として贈られる場合が多く、供花としては不向きと言えます。
法要やお悔やみで贈るなら、アレンジメントを。故人のご家族が、花を活けたり自身でアレンジするのが好きな方なら花束を。ごく近しい方や自宅の花立てに飾りたい場合は、切り花を選ぶといいでしょう。
お供えの花のマナー:本数
お供えする花の本数は、一般的に3本、5本、7本などの奇数本がいいとされています。
日本には古来より「半分に割れない数字は不思議な力がある」という考えがあるほか、偶数よりバランスがよく見えるといった理由に由来するとか。
また、仏壇の左右に1つずつ飾ることになりますので、同じ花束を2つ(二基)で1セット(一対)として用意しましょう。
お供えの花のマナー:相場
値段の相場は自身と相手方との関係により変化します。相場は以下の通りです。
遺族もしくは親族 ・・・ 15000円前後
故人と会社・仕事での付き合いがあった ・・・ 8000円前後
故人の友人もしくは知人 ・・・ 3000円前後
その他、一般的な相場は以下の通りです。二基一対として贈るなら、二倍の値段が相場となりますので注意してください。
会館や葬儀社でのお通夜や葬儀 ・・・ 7000円から20000円。スタンド花を贈ることが多いです。
自宅での通夜や葬儀 ・・・ 10000円前後。白ベースのアレンジメントを贈るとご遺族も扱いやすいです。
年忌法要 ・・・ 5000円から10000円。会館などでの法要の場合、前日か当日に届くように手配しておきましょう。自宅の場合 は、アレンジメントが喜ばれます。
お彼岸などで仏壇に供える ・・・ 3,000円から5,000円。
お供えの花のマナー:タブーとされる花の種類
お供えの花にはタブーとされる花がいくつかあります。時代の流れとともに、忌避感なく受け入れられている部分はあるものの、人によってはマナー違反だと感じるかもしれません。故人や遺族とごく近しい関係でなければ、マナーに沿った花を選びましょう。
棘がある花
棘は殺生や怪我を連想させるため、仏花としてはふさわしくありません。
例:バラ、カラタチ、ボケなど
香りの強い花
強い香りを不快に思う方もいるため、ふさわしくないとされています。
例:カサブランカ、オミナエシ
人が食べる花
供えられた花は、人の一生を表すとされています。そのため、人が口にする花をお供えするのは、あまりよくありません。
例:あわ、きび、オクラなど
名前や意味がよくない花
「死」を連想させるような花や墓地に植えられるような花は、縁起が良くないため避けましょう。毒があるものも同様です。
例:シビトバナ(彼岸花)
すぐに枯れる花
一日や二日ですぐ枯れてしまう花は、「無常」を感じさせるため避けるようにしましょう。
例:むくげ
お供えの花のマナー:ふさわしいとされる花の種類
お供えする花が厳密に決まっているわけではありませんが、ふさわしいとされる花の基準はあります。
NGなお花を避けつつ、「日持ちする」かつ「白色」のお花を選べば間違いないでしょう。ここでは、そういった条件に当てはまる花を3つご紹介します。
菊
日本人にとって古くから親しみのある花です。日持ちがよく、枯れるときも花弁が散りづらいので、参列者などの周りのことも考えた選択肢として人気。
白色の品種もあり、大きさ、咲き方も多種多様です。
カーネーション
カーネーションも、供花に相応しいとされる花のひとつです。赤いカーネーションは母の日のイメージが強いですが、白いカーネーションは亡くなった母へ贈る献花としての意味合いが強いんですよ。
ユリ
凛とした印象が美しいユリは、供花としてよく選ばれています。開花したらすぐおしべ(花粉)を取り除くことで、部屋に花粉が散らばるのを防げます。
胡蝶蘭(コチョウラン)
胡蝶蘭は「日持ちする」かつ「白色」のお花という条件にピッタリ当てはまるお花です。
弔事にも慶事にも用いられるお花ですが、価格が高い部類のお花なので数多く供えるのは難しいかもしれません。
お供えの花のマナー:自宅の仏壇への飾り方
自宅の仏壇に飾る場合は、同じ花束を二つ用意し、左右対称になるように花をまとめます。
花束を作る際は、下から上に向かうにつれて濃い色から淡い色になるよう、グラデーションを意識するときれいに仕上がります。
もし花瓶が一つしかない場合は、向かって左に花瓶、真ん中にお香、右にろうそくが来るように配置します。
お供えの花を購入できる場所
最後に、お供え用のお花を購入できる場所をご紹介しましょう。
お通夜や葬儀のお供えに花を贈る場合は会館や葬儀社で手配されることが多いため、外部から持ち込みたい場合は、持ち込みが可能かどうかを事前に確認しましょう。
自宅での法要の場合は、花が枯れないように管理することが重要です。
実店舗で購入する場合、持っていく日まで水につけておき、持ち運びの際には、気温や花粉に注意しましょう。
最近ではネット通販での購入もできるので、迷っている場合はこちらがおすすめです。
まとめ
いろいろと解説してきましたが、お供え花のマナー云々の前に、故人を偲ぶ心がもっとも大切です。生前の故人に思いを馳せ、ご遺族と思い出話などをして故人の旅立ちをお見送りしましょう。
お供え花のマナーを守りつつ、故人の好きだった花を贈ることができれば一番の供養になります。ご遺族の思いを汲み取ってお供え花を選んでも問題ありません。
心を込めて選んだお花に込められた気持ちは、その香りとともに故人にもきっと届けられることでしょう。