葬儀の「献花(けんか)」とは、告別式で故人に花を捧げる行為のことです。仏教の焼香のように、一人ひとりの参列者が故人に花を贈ります。
「誰が準備をするのか」や「どんな花を選ぶのか」、「どんな手順で献花をするのか」などには決まりがあり、それに従う必要があります。
そのため、献花のある葬儀に参列する人や、献花のある葬儀を催す人は、事前にマナーを知っておきましょう。
本記事では、献花とは何かや花の手配方法、献花の基本的なやり方を説明します。また、献花以外の葬儀にまつわる花も紹介します。
なかなか馴染みのない葬儀の献花ですが、知らないと周りに迷惑をかける恐れや非常識だと思われる恐れがあります。葬儀でスマートに振る舞えるよう、事前に献花について知っていきましょう。
献花とは葬儀の参列者が一人ひとり花を捧げること
葬儀の「献花(けんか)」とは、告別式中に参列者が故人に花を捧げる行為です。
参列者は一人一輪ずつ花を持ち、会場前方に準備されている「献花台(けんかだい)」に花を捧げます。参列者一人ひとりが故人に最後の別れを告げる献花は、仏教の焼香に当たる行為とされています。
葬儀にまつわる花は複数ありますが、献花と混同されやすいのが「供花(きょうか)」です。
故人へ贈られる花という点は、献花も供花も同じです。
しかし、献花と供花は「誰が手配するか」が異なります。献花を手配するのは喪主ですが、供花を手配するのは故人と親しかった参列者です。
献花と供花は、捧げる目的やタイミングも異なります。献花は故人に最後の別れを告げるために告別式中に贈られる花です。一方で、故人や遺族への弔意を込めて贈られる供花は、通夜に間に合うように届けられます。
以上のように、献花と供花は別の花です。
花を贈りたい参列予定の人は、供花を届けましょう。
供花の手配方法は地域や宗派によっても変わりますが、担当の葬儀社に確認すれば教えてもらえます。故人と遺族に花を贈るなら、まず葬儀社に確認してみましょう。
献花は主にキリスト教の葬儀で行われる
献花はすべての葬儀で行われるわけではありません。仏教の葬儀では、故人に別れを告げる行為として焼香を採用するので、献花は行われません。
献花が行われるのは、主にキリスト教の葬儀です。
キリスト教の葬儀で献花が採用される理由は、「仏教の焼香にあたるものがないため」といわれることもありますが、はっきりとしていません。
ただ、キリスト教のメインの教派である「プロテスタント」と「カトリック」では献花が採用されています。献花は主にキリスト教で採用される儀式と考えて問題ないでしょう。
無宗教葬で献花が行われることが増えている
献花はもともとキリスト教の葬儀で行われる行為でしたが、最近では「無宗教葬」でも採用されることも増えています。
無宗教葬とは、その名の通り特定の宗教のもとに行われない葬儀です。
無宗教葬には特定の決まりはありません。故人が好きだった音楽をかけたり、故人の生い立ちのスライドを上映したりと、「故人らしさ」が感じられるように、自由に内容が決められます。
宗教色よりも故人らしさを優先する無宗教葬では、読経ではなく黙とうで祈りを捧げ、焼香ではなく献花で個人を見送ります。
ちなみに、献花は「お別れ会」で採用されることもあります。
お別れ会とは、葬儀とは別で開かれる送別のための催しです。お別れ会は形式にとらわれずに故人を送別するために開催されます。お別れ会の内容はすべて自由ですが、カジュアルな雰囲気で故人を見送れる献花が行われるのが一般的です。
日本で最も多いのは仏教式の葬儀ですが、無宗教葬を選ぶケースも増えています。葬儀後にお別れ会が開催されることも珍しくなくなってきました。
今後、無宗教葬やお別れ会で献花を行うことになる人もいるかもしれませんね。
献花の花は喪主が手配する
献花を採用する場合、献花用の花は喪主が手配します。
参列者は式場に用意されている花を捧げます。参列者が花を持参する必要はないので注意してください。参列者が持参してしまうと、好意からであっても、遺族側に迷惑をかける可能性があります。
献花の持ち込みがあると、遺族はどう対応すべきかを葬儀社と相談する必要があります。ただでさえ葬儀の準備であわただしい状況なのに、さらに負担をかけることになるでしょう。
そのため、参列者として参加するなら献花の用意はひかえてください。
故人や遺族に弔いの気持ちを届けたいなら、献花ではなく「供花(きょうか)」を贈りましょう。供花とは、お通夜までに贈られて、式中に祭壇や祭壇脇に飾られる花です。
供花の贈り方は本記事の後半で紹介します。
喪主として献花の手配をするには、葬儀社に献花を行う旨を伝えましょう。葬儀社が参列者分の花を式場に準備してくれます。
献花の費用は葬儀社や花の種類にもよりますが、1本300円が相場です。一般的な葬儀の参列人数は、30人から70人といわれているので、献花代はおよそ1万円から2万円です。目安として知っておくと良いでしょう。
献花では白いカーネーションやユリがよく使われる
献花の定番は一輪咲きの白いカーネーションです。カーネーションは葬儀にふさわしい色とされる白であることや、茎が長いこと、日持ちすることからよく使用されます。
イエス・キリストが十字架にかけられた日に、聖母マリアが流した涙の跡に咲いたのがカーネーションとされています。キリスト教と強いつながりを持つ点も、カーネーションが献花に使われる理由です。
白色であることや茎が長いことから、ユリや白い菊も献花でよく用いられます。
以上のように、献花で一般的に用いられるのは、白いカーネーションやユリ、白い菊ですが、特定の花を選ばないといけないという決まりはありません。
どの花を選ぶかは遺族や主催者の自由なので、故人が好きだった花が献花の花として用意されることもあります。
献花の基本的なやり方とマナーとは
献花のやり方は教派や地域によって変わりますが、基本的には次の通りです。
- スタッフから花を両手で受け取る
- 遺族に一礼して祭壇の前まで進む
- 故人に向けて一礼する
- 花を献花台に置く
- 2・3歩下がって祭壇へ一礼する
- 神父や遺族に一礼して席へ戻る
とくに注意したいのは花の向き。スタッフから受け取るときは花が右手側、茎の根本が左手側に来るように持ちます。
花の向きはしばらくは受け取ったときのままですが、献花台に進んだら変える必要があります。花を自分側、茎の根元を祭壇側に向けて献花台に置きます。
お供えする前に、一度向きを変えることは覚えておいてください。
また、故人との関係によって献花の順番が決まることも知っておきましょう。焼香と同じように、献花は故人と関係が深い人から行います。
具体的には、はじめに喪主、次に遺族、そして参列者の順でお供えする順序です。
献花は日常的に行う行為ではありません。「はじめて献花をする」「献花をするのは数年ぶり」という人も多いのではないでしょうか。
難しく感じるかもしれませんが、やること自体は「花をもらう」「花を渡す」「一礼する」とどれも簡単なことです。
式中は前の人が献花する様子も見られるので、落ち着いて行えば心配いりません。
献花以外のお葬式にまつわる花を紹介
葬儀にまつわる花は、献花の他にも複数あります。どれも故人の供養のための花ですが、誰が手配するのかや届けるタイミングが異なるので区別が必要です。
混同しないように、それぞれの特徴を見ていきましょう。
枕花(まくらばな)
「枕花(まくらばな)」は、故人と特に親しい関係にあった人が送る花です。届けられた花は、その名の通り故人の枕元に飾られます。
枕花はお通夜までに届ける必要があります。訃報を受けてからすぐに花を手配してください。
どんな花を選ぶか迷うかもしれませんが、花屋に相談すれば問題なく選べますよ。実店舗の花屋でも通販の花屋でも手配は可能です。いずれかで注文して、故人宅へ届けてもらいましょう。
供花(きょうか)
「供花(きょうか)」は、故人と親しい関係にあった人から贈られる花です。贈られた供花は、お通夜や告別式中に祭壇脇に飾られます。
供花を手配方法は、「葬儀社に依頼する」と「他の花屋に依頼する」の2通りあります。
葬儀社に依頼する場合の手順は次の通りです。
- 遺族が供花を辞退していないかを確認する
- 供花を贈りたい旨を伝える
- 故人との関係や名前を伝える
他の花屋に依頼する場合は、次のような流れです。
- 遺族が供花を辞退していないかを確認する
- 他の花屋の供花を持ち込み可能かを確認する
- 注文したい花屋に供花を買いたい旨を伝える
- 故人との関係や名前を伝える
- いつどこに花を届けてほしいかを伝える
遺族が供花を辞退しているケースもあります。そのため、供花を贈るなら、まずは葬儀社に確認してみましょう。
花輪(はなわ)
「花輪(はなわ)」は、故人と関係が深い会社や団体から贈られ、式場の入口に飾られるものです。スタンドの上には「花」が「輪」のように並んでいるので、花輪といわれます。
花輪は造花で作られることが多いため、一般的な生花店では注文できません。花輪を手配するなら、葬儀社に依頼します。
最近では花輪を辞退する遺族も増えています。葬儀社に連絡するときは、まず花輪を受け付けているかを聞いてください。
まとめ
告別式で故人に花を捧げる行為が「献花(けんか)」です。献花用の花は喪主が手配します。遺族を困らせる恐れがあるので、参列者は持参をひかえましょう。
参列者が贈れるのは「供花(きょうか)」です。遺族が辞退していないなら、お悔やみの気持ちを込めて贈ってみましょう。