コラム

2022/07/29

桃の節句・ひな祭りの飾りがもつ意味は?由来から飾り方まで

桃の節句とも呼ばれる、ひな祭り。
ひな人形やひし餅、祝い膳などを飾り、女の子の健やかな成長を祈ります。

ひな祭りは日本人なら誰もが知る行事ですが、飾りの由来や歴史を詳しく知っている方は少ないはず。

ひし餅の色や、飾る花の種類には、長い歴史の中で伝わってきた物語が秘められています。お花など飾りの意味を知ることで、ひな祭りという行事の見え方がこれまでとはガラッと変わるでしょう。

お子様にも、ひな祭りの由来や意味について、教えてあげられるようになりますよ。

ひな祭りの飾りは「邪気払い」の儀式に由来

ひな祭りの飾りは「邪気払い」の儀式に由来

まず、ひな祭りの由来は中国より伝わった「上巳(じょうし)の節句」。
上巳とは、旧暦3月の最初に来る巳の日のこと。この時期は季節の変わり目なので、当時の中国では邪気が入りやすい時期と考えられていました。

そして、ひな祭りに人形が使われるようになったのには、中国に伝わる次のようなストーリーが由来です。

「漢の時代、3人の娘をもうけた男性がいましたが、娘は3人とも生後3日以内に亡くなってしまいました。男性が悲しむ姿を見た村人たちは、3人の娘の亡骸を酒で清め、遺体を川や海に流したのです。」

この話が平安時代に日本に伝わり、邪気払いの儀式として、土や紙の人形を流す文化に変化したのだとか。それが貴族の子どもたちの間で「ひな遊び」という遊びに発展したようです。
江戸時代になると、貴族がひな人形を美しい段飾りにして祝うようになりました。これが明治大以降に一般家庭へと広まり、大衆文化として定着していったのです。

このことから、ひな祭りは厄払いの意味が込められた、女の子の成長を祝う行事に。
そんなひな祭りの飾りには、「ひな人形」「祝い膳」「桃の花」があります。それぞれどのように飾ると良いのでしょうか。

伝統的なひな祭りの飾りは「ひな人形」「祝い膳」「桃の花」

伝統的なひな祭りの飾りは「ひな人形」「祝い膳」「桃の花」

ひな祭りの飾りは、どれも華やかで美しいものばかりです。
ここでは、主なひな飾りについて詳しくご紹介しましょう

ひな人形

流しびなから発展した「ひな人形」は、7段飾りや、親王飾りが有名です。段飾りは奇数を吉とする考え方から5段や7段など奇数にします。
一方、親王飾りは男びなと女びなだけを飾ります。

祝い膳

ひし餅、はまぐり、ひなあられ、ちらし寿司など、ひな祭りの行事に合わせた料理でお祝いします。祝い膳の道具には、漆塗りの「高足ご膳」や「椀」などがあります。華やかなお祝いの食事も飾りのひとつです。

桃の花

ひな祭りには、厄除けの意味を持つ桃の花を飾ります。桃の花は桜や梅と異なり、花びらの先端が尖っているのが特徴。桃の花にもさまざまな種類があります。

地域によって少し違う!知っておきたいひな人形の飾り方

地域によって少し違う!知っておきたいひな人形の飾り方

ひな人形の飾り方は、地域によって少し違いがあります。では、関東・関西ではどのような違いがあるのでしょうか。

関東:向かって左側に男雛・右側に女雛

そもそもひな祭りは貴族の遊びに由来し、ひな壇は皇室を模しています。そのため、人形など飾りの配置も、皇室のルールに則っているのです。

この点、関東では現在の皇室ルールを標準としています。現在の皇室で、天皇は必ず皇后の右側(正面から見て左側)に立たれるため、ひな壇にもその様式が反映されているのです。

関西の一部:向かって右側に男雛・左側に女雛

しかし、こういった現代のルールは明治時代の終わり頃から採り入れられた様式です。
より古い歴史を持つ場所、例えば京都を含む関西では、明治時代以前の古い皇室ルールがひな壇の飾り方に反映されています。

これらの地域では、ひな壇の飾り方は平安時代のルールに則っています。
古来、日本には「左方上位(左側の方が位が高い)」という考え方があり、ひな人形の左大臣と右大臣では、左大臣の方が格上になります。そのため、平安時代などの帝は妃の左側(正面から見て右側)へ座っており、これが京都や関西の一部でひな壇の様式として残っているのです。

ひな祭りの飾りには、他にも「ひし餅」や「白酒」があります。それぞれ、どのような意味があるのでしょうか。

ひな祭りの飾りに「ひし餅」や「白酒」がある理由

ひな祭りの飾りに「ひし餅」や「白酒」がある理由

ひし餅の色は、白・赤・緑の3色です。白は雪、赤は桃の花、緑は若草と、春の新芽の季節を表現しています。
ひな人形は女の子の厄の身代わりとして引き受けてもらうために飾るもので、ひし餅はひな人形に対する感謝の気持ちを表すお供えとしての意味も持つのです。

白酒は、桃の花を刻んで清酒に入れた「桃花酒」の名残なのだとか。

桃の花は、中国では長寿の象徴です。邪気を払うという言い伝えから、祝い花として使われています。日本では江戸時代から、桃の花を引き立てる酒として白酒が飲まれるようになりました。

「お花」がひな祭りの飾りになった深いわけ

「お花」がひな祭りの飾りになった深いわけ

ひな祭りに花を飾る理由は、華やかさと花の意味に由来します。

〇桃の花
桃は中国で昔から「仙桃」と呼ばれ仙人の力、不老長寿の効能があるとされ、吉祥の象徴でした。中国では桃が長生きや強さの象徴になっており、桃の花の効用にあやかって、ひな祭りの時に飾るようになりました。
桜の花言葉は、「精神美」「優美な女性」「純潔」です。女の子の健やかな成長を祈るにふさわしい花といえます。

〇橘(たちばな)
橘は、みかんのような柑橘類の樹木で、白い花と小さな実をつけます。1年中葉が緑色のままであることと、黄色の実が実り続けることから、こちらも「不老長寿」を意味します。
家紋や文化勲章のデザインに用いられるなど、日本の歴史と文化に深く結びついた樹木です。

ひな祭りの飾りに使う花は造花?生花?

ひな祭りの飾りに使う花は造花?生花?

桃の花も、桜も橘も、生け花であれば香りも併せて楽しむことができます。用意が難しい場合は造花でもいいですが、花の香りは生け花だからこそ味わえるものです。

また、ひな祭りの季節だからこそ楽しめる旬の味わいがあります。
折角の伝統行事です。生け花を用意できたら子どもや孫はよりひな祭りを楽しめるかもしれません。花の香りとともに記憶して、いつまでも心に残る思い出となることでしょう。

まとめ

ひな祭りは、中国の「上巳の節句」に由来しています。身代わりとして作られたひなを流して邪気を払っていたことから、ひな人形には供え物が欠かせません。
季節を表現したひし餅や、祝い膳を供えて、桃の花で飾ります。桃の花の他にも、桜や橘を飾ることもあり、それぞれ女の子の健やかな成長を祈る象徴になります。

地域ごとに異なる飾り方も、全て人の想いによるものです。
ひな祭りが女の子にとってすてきな思い出となるよう、生花を飾ってひな人形を華やかに彩りましょう。