暖かくなると、サクラを鑑賞しにお花見に出かける人は多いですよね。
日本の春の風物詩であるサクラは品種改良が盛んで、さまざまな種類のサクラが存在しています。分類方法にもよりますが、その数はなんと600種類以上とも言われています。
豊富な種類があるサクラですが、品種によって花びらの枚数が異なっていることはご存知でしょうか?
わたしたちが頭の中でサクラをイメージするとき、たいていの場合、5枚の花びらを持つサクラを思い浮かべるでしょう。
しかし、実は、サクラの花びらの枚数は5枚だけに限りません。10枚のものもあれば、50枚のものもあります。中には、驚くべきことに100枚以上の花びらをつける種類もあるんですよ。
本記事では、花びらの枚数に着目して、サクラの種類をご紹介していきます。
それぞれのサクラの花の開花時期や特徴についてもご説明していきますので、お花見の時の参考にしてみてくださいね。
「一重咲き」の花が特徴のサクラ
「サクラの花」と聞くと、きっと多くの人が、5枚の花弁のサクラを思い浮かべるでしょう。携帯の絵文字で使われるサクラも、たいていは花びらが5枚の形になっていますよね。
それもそのはずで、世の中に多く存在しているサクラの種類のうち、6割程度は花びらが5枚ついた状態で花を咲かせる「一重咲き」なのだそうです。
一重咲きは、サクラの花びらのつき方としては最も一般的だと言われています。
年老いた木だと、サクラの花びらが5枚つかずに、3枚や4枚となってしまうこともありますが、その場合も一重咲きに分類されるんですよ。
一重咲きのサクラの例として、ソメイヨシノや寒緋桜、河津桜などがあります。
染井吉野(ソメイヨシノ)
3月上旬から4月下旬に花を咲かせるソメイヨシノ(染井吉野)は、多くの日本人にとって最も身近なサクラの種類といえるでしょう。
ソメイヨシノの花の色は柔らかな淡いピンク色で、花の大きさは約3.5センチです。
お花見の定番の花であり、サクラの開花予想であるサクラ前線も、ソメイヨシノの開花状況が基準になっているくらいです。まさしくサクラの王様のような存在と言えるでしょう。
そんな有名なソメイヨシノですが、自然界で生まれた種類ではないということを知っていましたか?
ソメイヨシノには、種が付きにくいという特性があり、江戸時代末ごろに人の手によってつくられたと言われています。エドヒガンを母親、オオシマザクラを父親とする雑種です。
現在、日本各地に植えられているソメイヨシノは、挿木や接木によるクローン増殖で増えたものなんですよ。
そのため、今や世界各地に植えられているソメイヨシノは、もとをたどれば最初は1本のサクラの木だったのです。そこから世界中に広がり、現在はアジアのみならず、欧米などでもその美しさで多くの人を魅了しています。
そんなソメイヨシノの歴史は、意外と浅いんです。江戸時代の終わりごろ、現在の豊島区駒込に位置する「染井村」で、植木屋が品種改良によって作ったソメイヨシノを売り出したのが最初だと言われています。
当初は、サクラで有名な吉野山にちなんで「吉野桜(ヨシノザクラ)」と呼ばれていました。しかし、吉野に植えられているのはソメイヨシノではなく山桜だったので、混乱を避けるために、染井村から生まれた「ソメイヨシノ」と名付けられました。
ソメイヨシノが全国的に知られたのは、昭和の高度経済成長期なので、驚くべきスピードで日本人の生活に馴染んでいったのですね。
現在も駒込には、「染井霊園」や「染井通り」など、染井村の名残が地名に残った箇所が存在しています。また、駒込駅の北口には、「この地がソメイヨシノの発祥の地である」と示した記念碑が立っているんですよ。
生長が早いことが特徴であるため、家で栽培する際は鉢植えにするか、枝を切ってあげて樹の高さを調整すると良いですよ。
寒緋桜(カンヒザクラ)
カンヒザクラと読むこの種類は、花が下向きに咲くことが特徴です。
台湾、中国南部で生まれたこのサクラは、日本でも鹿児島県や琉球列島でよく見かけることができます。本州へ伝わったのは江戸時代で、暖かい地域の庭園や公園などに植えられました。沖縄では、「サクラ」といえば、このカンヒザクラのことを指しているそうです。
沖縄ではヒカンザクラ(緋寒桜)とも呼ばれているそうですが、本土のヒガンザクラ(彼岸桜)と混同されるのを避けるため、通常はカンヒザクラと呼ばれます。
沖縄では山でカンヒザクラが見られますが、自然に生えたものなのか、人によって持ち込まれたものが野生化したものなのかどうか、はっきりしていません。ただ、石垣島の自生地は、国の天然記念物に指定されているんですよ。
開花時期はソメイヨシノと比べてかなり早く、1月下旬から2月上旬ごろ。最も早く開花情報が出るサクラの種類の一つです。そのため、「元日桜」という別名もあります。
花は、濃い目の紅色から緋色をしています。花の大きさは小ぶりで、1.5センチから 2センチほどです。寒い時期に鮮やかな赤色の花を咲かせることから「寒緋桜」と名づけられました。寒い冬に綺麗な緋色のカンヒザクラを見かけると、「春が近づいているな」と感じます。
一般的にイメージするソメイヨシノのような花とは異なり、カンヒザクラは釣鐘状の花が全て開ききる前に、半開きのまま落下してしまうのが特徴。その見た目から、「変わった梅だ」と、勘違いされてしまいやすいのだとか。
樹の高さは10メートルにも達します。暖かいところで育つ亜熱帯性のサクラですが、比較的寒さに強く、関東でも育ちます。雑木であり、繁殖力が強いです。
ちなみに俳句の世界では「緋寒桜」が冬の季語になっています。
河津桜(カワヅザクラ)
3月上旬から中旬にかけて花を咲かせる河津桜。場所によっては、2月中旬ごろから見ることができます。梅が咲くタイミングと同じころですね。
花の大きさは約3センチで、紅紫色の鮮やかな花を咲かせます。ソメイヨシノの淡い儚さとはまた違ったはっきりした色を持つ河津桜には、見るものを強くひきつける魅力があります。
ソメイヨシノは、開花をしてから約2週間ほどで散ってしまいますが、河津桜は、開花期間が長めで、約1ヶ月間ほど咲いています。長く楽しむことができるのは、嬉しいですよね。
名前の由来は、静岡県の河津町で発見されたことから来ています。ここでは、毎年約100万人の人々が訪れる「河津桜まつり」という大きなお花見イベントが開催されてます。
約850本ものサクラの樹が河津川沿いに植えられていており、町内全体では、約8,000本もの桜があります。
見ごたえたっぷりの河津桜を見て圧倒されるのも良し、露店やサクラのライトアップなどの様々なイベントを楽しむのも良しです。
河津桜は、ソメイヨシノのように人の手によって作られた園芸品種ではなく、自然界に生まれてきた品種です。
沖縄などを中心に暖かい場所で咲くカンヒザクラ系と、早咲きのオオシマザクラ系の自然交配種と考えられています。
「半八重咲き」の花が特徴のサクラ
半八重咲きの花とは、花びらがおよそ6枚から10枚ほどのものを指しています。
ただ、「何枚以上何枚以下であれば半八重咲きと呼ぶ」と明確に決まっているわけではないので、人や地域によって分類に差があるようです。
半八重咲きのサクラには、アーコレードという品種があります。
アーコレード
アーコレードというサクラの種類は、春と秋に2回咲く、二季咲きの品種です。開花期は10月下旬と3月下旬です。1年で2度楽しめるのが嬉しいですね。
アーコレードには、4〜5センチほどの大輪の花が美しく咲きます。
花の色は淡紅色です。春先に咲く花のほうが色が濃く、綺麗です。
紅山桜(ベニヤマザクラ)と小彼岸桜(コヒガンザクラ)の交配種であるアーコレードはイギリスで作られました。ただ、イギリスでは春のみの開花なのだそう。
ちなみに、アーコレードという名前は、英語で「称賛」を意味する「Accolade」に由来しているとされています。
「八重咲き」の花が特徴のサクラ
八重咲きとは、花びらが10枚以上つく咲き方です。
ただ、こちらも半八重咲きと同様、厳密な枚数の定義があるわけではありません。100枚以上でも八重咲きとする場合もあります。
ちなみに、「八重桜」とは、八重咲きに咲くサクラの総称です。
八重咲きのサクラには、アサヒヤマやアマノカワなどがあります。
アサヒヤマ
八重咲きの華やかで可愛らしい花を楽しめるアサヒヤマ(旭山)は、小柄なサクラの種類です。最大2メートルほどの高さにしかならないので、鉢植えや盆栽に向いているんです。「桜盆栽」としておうちで親しまれているサクラの1種です。
アサヒヤマの花は、ソメイヨシノよりも1週間ほど遅く、4月中旬から下旬にかけて咲き、淡いピンク色をしています。花の大きさは3.5センチから4.2センチほどで、花びらの数は10-15枚ほどです。
耐陰性や耐寒性があることも、自宅でも育てやすいサクラだといわれる理由の一つです。日の当たる風通しの良い場所であれば、室内でも戸外でも育てることができます。温度が0度以下に下がってしまっても、たくましく育ってくれるんですよ。
最近は、寒い冬をじっと耐え抜き、春に満開の花を咲かせるアサヒヤマを「合格の木」として、おうちに迎える方もいるのだそうです。
受験生がいるご家庭へプレゼントしてあげたら喜ばれるのではないでしょうか。
天の川(アマノカワ)
アマノカワ(天の川)は4月下旬に香り高い、薄ピンクの花を咲かせます。花の大きさは3.5センチから4.5センチほどで、上を向いて咲くのが特徴のサクラの種類です。
アマノカワは、その名の通り、夜空の「天の川」に見立てて名付けられました。
垂直に伸びる小枝と、薄紅色の花が織りなす優美な美しさを例えたと考えられます。
アマノカワはオオシマザクラ系のサクラで、オオシマザクラにヤマザクラやエドヒガン、マメザクラ、カスミザクラなどのさまざまな種類のサクラを掛け合わせて作られました。
明治時代に、今もサクラの名所として名高い荒川堤から全国に広がったと考えられています。
アマノカワの枝は直立する性質があるため、樹の形を全体として眺めると、竹箒を逆さにしたように見えます。
独特な形であることや、狭い場所でも育てやすいサクラとして近年人気が出ており、都心部のマンションや商業施設のシンボルツリーとされたり、街路樹として植えられることが増えているんだそう。
上手に育てることができると、滝のように花が連なっている様を開花時に楽しむことができます。和の雰囲気を感じさせる品種として、欧米からの人気が高い種類なのだそうですよ。
「菊咲き」の花が特徴のサクラ
菊咲きとは、その名の通り、菊のようにたくさんの花びらを咲かせる咲き方です。
花びらの枚数によって厳密に区分分けされているわけではないので、その定義ははっきりしていません。100枚以上とされる場合もある一方で、60枚前後でも菊咲きに振り分けられることもあります。
菊咲きのサクラの中には、なんと300枚以上の花びらをつけたものもあるんですよ。
それが、金沢の兼六園にある兼六園菊桜です。日本一花びらの数が多い珍種で、天然記念物にも指定されています。
ただ、残念なことに原木と2代目の木は枯れてしまったそうです。現在は、2代目を3代目に接ぎ木して育てています。このまま元気な花を咲かせてほしいですね。
作並菊桜や水晶などが主な菊咲きの品種に当てはまります。
作並菊桜(サクナミキクザクラ)
サクナミキクザクラと読むこの種類は、宮城県作並地方で栽培されている菊咲きのサクラで、昨今見かけることが増えてきた品種です。
薄紅色の大ぶりの花が特徴で、4月下旬に花を咲かせます。樹高は4メートルから8メートルくらいにまで育ちます。
40枚~50枚ほどの花びらをつけたボリューム感のある菊咲きの花が印象的な品種です。
淡いピンク色が愛らしく、暖かい春を迎えたことを告げてくれます。
属名である「Prunus」 は英語でスモモを意味する「plum」から来ているそうです。
水晶(スイショウ)
4月下旬に開花する大きな白色が美しい水晶の花は、見ごたえがあります。
岩手県盛岡市にある下米内・杉本邸に植わっており、気品をたたえた美しい花の様子がまるで水晶のようであったため、「水晶」と名づけられました。
まとめ
普段何気なく眺めていたサクラの花が、品種によって花びらの枚数や色にこれほどの幅があるとはご存知でなかった方も多いのではないでしょうか。
「一重咲き」、「半八重咲き」、「八重咲き」、そして「菊咲き」。お気に入りのサクラはどの咲き方でしたか?
さまざまな種類のサクラは、それぞれ開花時期が少しずつずれているものもあるので、春先にいろいろな種類のサクラを見に行けば、2月中旬から4月の終わりごろまでの長い間、美しいサクラを楽しむことができます。
これだけ豊富な種類のサクラを鑑賞できる日本に住んでいることは幸せなことですね。
そして、美しいサクラを見て心が癒され、おうちでもお花を飾ってみたいと思ったら、「お花の百貨店」をぜひ覗いてみてくださいね。もちろん、離れて住んでいる大切な方へのプレゼントにも大歓迎です。